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ふつうの文章

夏目漱石『吾輩は猫である』より。吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で一番獰悪な種族であったそうだ。

同じく漱石『草枕』より。山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る

同じく漱石『坊っちゃん』より。親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び下りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかもしれない。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい、弱虫やーい、と囃したからである。→ 青空文庫で読む

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春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。

夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。

秋は夕暮れ。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などのつらねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、はた言ふべきにあらず。

冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火など急ぎおこして、炭もて渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も白き灰がちになりてわろし。

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落した。雪の冷気が流れ込んだ。

娘は窓いっぱいに乗り出して、遠くへ叫ぶように、駅長さあん、駅長さあん、と呼んだ。雪を踏む足音が聞こえた。暗い夜であった。暗い中を白い雪が光っているのだった。

灯のともった客車の中が、外の雪よりも暗いくらいに感じられた。島村は汽車が動き出すのを待っていた。遠くの山から風が吹き下ろしてきた。

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吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

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